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  • 撮影/紀室裕哉(令和3年1月21日)

気仙川水門に「全建賞」

豊島建設などに表彰状
困難乗り越えた県事業評価

一般社団法人全日本建設技術協会(大石久和会長)が、全国の公共事業から選定する令和2年度の「全建賞」に、県が発注した河川等災害復旧事業「気仙川水門」が受賞した。共同企業体(JV)として整備に携わった大船渡市の豊島建設㈱(紀室裕哉社長)にも表彰状が届き、関係者は厳しい自然条件をはじめ幾多の困難を乗り越えた大事業竣工の喜びをかみしめる。

全建賞は、建設技術の活用や公共事業の進め方、運用の工夫などによって特出した成果が得られた、もしくは期待される事業、施策を選び、実施機関を表彰するもの。昭和28年に設立され、毎年実施している。

今回も国、都道府県、市町村、機構・公社などの機関から、各地方協会長の推薦を受けた事業が応募し、84事業が全建賞を受賞。このうち、13事業が選ばれた東日本大震災に係る復旧・復興事業特別枠に、気仙川水門が入った。

県大船渡土木センターが推薦した気仙川水門事業は、東日本大震災で被災した陸前高田市の気仙川河口部で、県内最大級の水門を新設。平成25年3月に着工し、昨年11月に竣工した。
堤防高はT・P(東京湾平均海面)+12・5㍍で、震災前の護岸に比べて7㍍高く、延長は211㍍。安藤ハザマ・戸田建設・豊島建設JVが水門土木工事を請け負った。
汽水域独特の水流環境にある中で、特に二重の鋼矢板で川を締め切った形での基礎工事が苦難を極めた。岩泉町などが甚大な被害を受けた平成28年の台風10号襲来時には、予想をはるかに上回る高潮に見舞われたという。

さらに、アユやサケをはじめ、漁業環境保全にも配慮した工程管理を重ねたほか、周辺で同時並行的に進む大規模な復旧・復興事業とも歩調を合わせながら整備。多くの困難を乗り越え、震災10年を前に完成を果たし、防潮堤などとともに高田海岸一帯の「津波防御ライン」が確保された。

豊島建設では震災前、高田松原地区では川原川水門整備を手がけ、奇跡の一本松前に現存する「しおさい橋」の施工では県知事による「景観賞」も受けた。河口部の事業で蓄積したノウハウと環境把握が、今回の大事業にも生かされた。
紀室社長は「JVの一員として受賞にかかわることができ、大変うれしく、土木センターをはじめ関係機関に感謝の思いでいっぱい。多くの人命が奪われることは二度とあってはならず、水門が人命を守り抜くシンボルであり続けてほしい」と話している。(令和3年7月18日朝刊 東海新報掲載)